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Vol.04
職場のVOC濃度改善により知的生産性が最大1.5倍に

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近年、快適な職場環境を求める声が高まっています。職場環境には、人間関係のような人的環境以外にも、明るさや温度といった物理的な環境条件も含まれ、そのなかでも注目度が高まっているものが室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)です。

 

空気質とは、屋内の空気中の成分やその評価を指すものであり、中でも代表的な空気質要素にVOCが挙げられます。

 

 

VOCとは:VOCとその影響

 

VOC(Volatile Organic Compounds)とは揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称で、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質が含まれます。(表1)

 

表1:揮発性有機化合物の分類

出典:鍵直樹「室内空気の見える化で健康被害を減らす 」<https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/faces28-kagi>より作成

 

空気中に存在するVOCは人の健康への影響が懸念されており、代表的な健康被害としてはシックハウス症候群が挙げられます。長期的に曝露されることで呼吸器や中枢神経に症状が現れることもあり、なかには深刻な症状につながる場合もあると言われています。また、研究環境など普段から化学物質を頻繁に用いる環境では、有機溶剤による中毒も懸念されます。

 

こちらの記事もおすすめ

コラム”ラボ環境の科学 空気質(IAQ)の低下による健康被害:シックハウス症候群について”

 

それでは、こうした健康被害の原因にもなるVOCはどこから生じているのでしょうか。

 

 

室内・職場でのVOC発生要因

 

室内・職場の空気中には、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンなど、極めて多くの種類のVOCが存在しています。身近な発生源としては、塗料、接着剤、カーペット、壁紙、家具、ヘアースプレー、香水、消臭剤、たばこの煙、ストーブ、キャンドル等が挙げられ、以前にも増して断熱性・気密性の高まった室内ではその空気を汚染する一因となっています。また、有機化合物を頻繁に用いる有機系実験室などでは、空気中のVOC濃度はどうしても高くなりやすいため、より注意が必要になってきます。

 

法律などによるVOC・tVOCの濃度指針値

 

日本の厚生労働省は平成9年にシックハウスの原因物質の一つであるホルムアルデヒドの室内濃度指針値※1を策定しました(表2)。以降、他の物質も追加され、現在までに13の物質について指針値が定められています。

 

表2:厚生労働省 指針値策定物質(東京都福祉保健局の資料を基に作成)

 

厚生労働省が濃度の指針値として定めたVOCは上記の13物質だけですが、それ以外のVOCも健康に影響を及ぼす可能性があります。特に多種多様な化学物質を取り扱う研究環境では、これら13物質以外のVOCも数多く存在しており、すべてのVOCについて正式に濃度指針値を定めることは現実的に不可能です。そこで、13物質以外の物質も含めたVOCの個々の濃度の合計として総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds : TVOC)の暫定目標値※2が400 μg/m3と定められています。

 

※1 指針値は通常、人が一生涯受けたとしても健康への有害な影響は受けないであろうとされる濃度のことです。

※2 暫定目標値は、健康影響や毒性学的知見から決定したものではなく、あくまでも室内空気の汚染状態の目安として利用されているものであり、TVOCと個別のVOC指針値とは独立に扱わなければならないとされています。

 

 

空気質改善による仕事の生産性への影響

 

VOCは私たちの認知機能にも影響を与えます。例えば、ハーバード公衆衛生大学院が2016年に発表した研究では、室内のVOC及びCO2の濃度によって、認知機能にどれほどの影響が出るかを調査しています。(表3)

 

表3: CO2及びVOCの室内濃度の知的生産性への影響

※1 基本活動レベル……平時に意思決定を行う業務全般にわたる能力(≒認知機能能力)

2 集中活動レベル……目の前の状況に注意を払う能力(≒意思決定能力)

 

本研究によると、換気により CO2及びVOCの室内濃度を軽減させることで、認知機能に関わる基本活動レベルや意思決定に関わる集中活動レベルのスコアが上がっており、空気質を改善することは仕事の生産性向上にも効果があることがわかります。

 

 

対策・対処法

 

それでは、どのようにすればVOCの量を減らして生産性を向上させることができるのでしょうか。

ここでは、手軽で実践しやすい対処法を3つ紹介します。

 

①換気

もっとも手軽にできる対策です。窓を開けての換気、空調設備を使用した換気など状況に合わせて換気をしましょう。

オフィスで窓がない、窓があっても開閉できないという場合には、サーキュレーターや空気清浄機の使用がおすすめです。この際は、部屋の扉を開け、部屋の外に空気が流れるように意識するなどして工夫して換気を行うことで効果が高まります。

 

オリエンタル技研工業の高性能フィルター空気清浄機能付きパーテーション “Aer”(左)と天井設置型空気清浄システム “HALO P”(右)の設置例 

 

VOCの放散量が少ない家具・建材等の選択

職場で家具・壁紙を選ぶ際や実験室で実験台などの実験什器を選ぶ際には、VOCの放散量を確認し、できる限り放散量の少ないものを選択することが効果的です。

 

たとえば、シックハウスの原因物質の一つであるホルムアルデヒドの放散量が少ない家具・建材を選択する際に参考になるものが、F☆☆☆☆(エフフォースター)という表記です。

 

F☆☆☆☆とは、建築基準法の改定と合わせてJIS・JASが認定した製品の安全等級の最高クラスで、F☆☆☆☆に認証される建材は、ホルムアルデヒドの放散速度が5 μg/m3 hと非常に低く、制限なしに使用できます。

 

このような表記にも着目して家具や実験什器を選択することで、室内のホルムアルデヒド濃度低減に役立ちます。

 

③空気質センサーの設置

健康や生産性にも大きく関連するVOCをはじめとした空気質の良し悪しは簡単に目で見て判断することができません。シックハウス症候群など顕著な症状が出ていれば、すぐに対策をしようと思えますが、集中力や認知能力の低下といった問題はどうしても放置されてしまう傾向にあります。

そこで重要なのが空気質の見える化です。空気質センサーを用いてリアルタイムでモニタリングを実施することで、VOC濃度をはじめとする空気質の状態を把握することができ、適切な対策を、適切なタイミングで行うことに大きく役立ちます。

 

より安心で健康的な環境を実現する第一歩として、空気質のモニタリングから始めてみてはいかがでしょうか。

 


     

    空気のDXでより健康的な職場環境を実現

     

     

    「オリエンタル技研工業」が提供する「センシングユニット カナリア」は、健康や生産性に影響を与える「温度」、「湿度」、「CO2」、「PM2.5」、「総揮発性有機化合物(tVOC)」の5つの代表的な室内空気質要素を高精度にモニタリングします。また、測定値が設定した閾値を超えると表示と音声で警告し、効率的に空調管理・換気などのリスク抑制のためのアクションを促すことで、安全・快適な室内環境の維持に貢献します。

     

    空気環境が気になる方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。

     

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