コーヒーは、9世紀ごろにエチオピアで発見され、その後世界中に広がった飲み物である。初期はコーヒーの実を潰して団子にするという食用だったものが、13世紀ごろから種子を煎って粉にし、飲用になった。コーヒーはその後、中東地域からヨーロッパに広がり、現在では世界中で愛飲されている。最近ではシアトル系コーヒーのカフェが広まり、自宅や職場に次ぐ生活の場という意味で、「サードプレイス」という言葉も生まれるほど、生活に欠かせないものになっている。
コーヒーの摂取は、様々な病気の予防につながることもわかっている。これらの研究は、人種や性別、生活環境などにもよるため、簡単に結論づけることはできない。しかし、様々な属性や生活習慣に合わせた研究成果が発表されている。
例えば、喫煙などの影響も出てしまうため、絶対に喫煙しない人々に焦点を当てた研究では、コーヒーの摂取は心血管疾患リスクを減少させることが示された(1)。特に、1日に2〜4カップのコーヒー摂取が最も効果的で、心臓病や脳卒中などのリスクを低下させた。一方、それ以上多くのコーヒー摂取(5カップ以上/日)は、効果がなかった。また、コーヒーの摂取が腎臓疾患のリスクを低下させる一方、網膜症や末梢神経障害には寄与しない結果となった。すなわち、適度なコーヒー摂取は心血管疾患と腎臓疾患のリスクを低減させる可能性と言える。
コーヒーに関して発表された数多くの研究成果をまとめたところ、コーヒーの摂取は、コーヒーに含まれる豊富な抗酸化物質によって、酸化ストレスと炎症を減少させる可能性があると結論づけられている(2)。
さらにコーヒーの摂取には、高齢化社会に伴って増大していく脳の病気への良い効果も知られている。研究では、コーヒーの摂取により、パーキンソン病のリスクが低減することが示唆されている(3) 。パーキンソン病は、神経伝達物質であるドーパミンが減少することで発症する神経疾患の1つで、顕著な症状は、震えやこわばりによって運動の制御が効かなくなることである。研究では、コーヒーの摂取によって、ドーパミンの輸送体に影響を与え、その結果、パーキンソン病の発症リスクが低下することが示唆されている。ただし、コーヒーの摂取をやめると、この効果が薄れる可能性も示唆されており、研究が続けられている。
他にも、エスプレッソコーヒーの摂取によって、アルツハイマー病の原因とされているタウタンパク質の凝集に、予防的な効果があることも示されている(4) 。コーヒーは治療薬ではないので発症した病気を治すものではないが、適切な摂取により神経疾患についても良い効果があると考えられる。
コーヒーは、生理学的な効果だけでなく、「一緒に飲む時間をとる」ことによる有用性も明らかになっている。サスカチュワン大学歯学部では、学生と教職員の関係改善のため、「ディーンとのコーヒー」という2週間ごとの非公式な対話イベントを導入した(5) 。ディーンとは「管理者」という意味で、学生にとっては指導教員や所属部署の教職員が該当する。コーヒーを用意しながらリラックスした雰囲気で対話イベントを開催し、様々なトピックについて話し合いを行った結果、89%の学生がコミュニケーションの向上を認識し、質問をすることやフィードバックを提供することに対して53%が高い満足度、23%が中程度の満足度を得た。この会合は全部で6ヶ月間の実施され、学生と管理部門の対話を向上させる有効な手段となり、学習環境の質を向上させた。
このように、コーヒーの摂取には、現代社会で問題となっている重篤な病気の発症を予防する効果があり、さらには人間関係の構築にも役立つということがわかっている。コーヒーの効果については、体質や生活環境もあるため一概には言えないが、適量を摂取することで多くの良い効果があると結論づけられている。コーヒーは、時代とともに形を変えながら、これからも人々に愛される存在であり続けると考えられる。
[参考文献]
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