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Vol.07
チョコレートの摂取で研究や仕事へのモチベーションを高める

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平成26年に厚生労働省が発表した成長分野などの中小企業に関する「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」によれば、働きやすく働きがいのある職場は、従業員のモチベーションが高く、会社の業績も高い傾向があるという。

 

働きやすく働きがいがある職場を構築して従業員のモチベーションを高めるためには、「本人の希望ができるかぎり尊重される配置」や「自分の希望に応じ、特定のスキルや知識を学べる研修の実施」などの雇用管理制度の改善も一つの手だが、ちょっとした工夫でも職場のモチベーションを高めることはできる。

 

その気軽な一例として、休憩時間や仕事の合間にお菓子などの甘いものやコーヒーなどのカフェインを摂取してモチベーションを高める行為がある。その中でも特に身近なチョコレートの摂取にはどんな科学的根拠があるのだろうか?

 

今回は、作業中にチョコレートを摂取することで、作業課題へのモチベーションが高まることを確認した駒澤大学の研究チームの研究成果をご紹介したい。

 

なお、本論文は日本感性工学会論文誌/21巻(2022)4号に掲載されたものである。

 

 

 

今回の実験に参加したのは、広島国際大学の医療系学部に所属する成人の学生または研究員の27名で、1ヶ月に2~3回チョコレートを摂取する習慣のある者だ。実験は、モチベーションに関する実験(以下、モチベーション実験)とリラックスに関する実験(以下、リラックス実験)の2つの実験がおこなわれた。

 

それぞれの実験手順を図1に示す。両者の基本的な手順は同一で、チョコレートの摂取のタイミングだけが異なっている。まず、脳波の測定後、心理評価を実施。5分間作業課題をおこなってもらった後に、心理評価を実施し、脳波を測定。モチベーション実験では、この脳波測定の間にチョコレートを摂取してもらった。その後、心理評価を実施。再び、7分間の作業課題をおこなってもらった後に、心理評価を実施し、脳波を測定。リラックス実験では、こちらのタイミングでチョコレートを摂取してもらった。最後に、心理評価を実施して、実験を終了とした。

 

 

 

図1 実験手順

 

 

また、参加者には、日を改めて、チョコレートを摂取しない対照実験に参加してもらった。対照実験は、チョコレートを摂取しない点以外は、全て本実験と同一の手順でおこなわれた。

 

 

表1:今回の実験で使用されたチョコレート
本実験
市販のミルクチョコレート 4.6g
対照実験
なし

 

 

実験で参加者におこなってもらった作業課題には、モニター上を移動する目標をマウスポインターでできる限り正確に追跡してもらう作業を採用した。この課題は、注意力・集中力を要する作業負荷の代表的な存在として知られている。

 

なお、心理評価には、このような実験でよく採用されるJ-PANAS(the Japaneseversion of Positiveand NegativeAffectSchodule)とアフェクト・グリッドが用いられた。J-PANASはポジティブ感情とネガティブ感情の大きさを測定するもので、ポジティブ感情とネガティブ感情に関する8つの質問について、「全く当てはまらない」から「非常によく当てはまる」までの6段階で参加者に回答してもらった。これに対して、アフェクト・グリッドは、快不快感情、覚醒感を測定するもので、快不快感情に関しては、「不快」から「心地よい」まで、覚醒感については、「落ち着いた」から「興奮した」までの各質問についてそれぞれ9段階で参加者に回答してもらった。

 

そして、以上の実験から得られた、作業課題における追跡誤差、J-PANASやアフェクト・グリッドから得られた心理データ、脳波測定によって得られたアルファ波のスケーリング係数、アルファ波のパワーなどのデータを、研究チームが統計的に処理したところ以下のことがわかった。

 

 

まず、リラックス実験からは、実験の目的であったリラックス効果は確認されなかったものの、モチベーションなどのポジティブな感情の向上や脳活動の活性化が確認された。


これに対して、モチベーション実験からは、作業課題の成績の向上やモチベーションなどのポジティブな感情の向上が確認された。研究チームによれば、「(チョコレートの摂取により)課題への取り組み意欲が増加し、良好なパフォーマンスが発揮されたと考えられる」という。

 

以上から、研究や仕事の合間にチョコレートをつまむことで、研究や仕事へのモチベーションを高めることができそうだ。

 

机の上にお気に入りのチョコレートを常備し、研究や仕事の合間につまんでみてはいかがだろうか?

 

きっと、研究や仕事へのモチベーションが高まり、仕事の生産性が高まることだろう。

 

 

[参考文献]

論文 「チョコレートの喫食行動がもたらすチア・アップとリラックスの二相性作用の評価

厚生労働省 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書

 

 


 

 

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