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Vol.04
チョコレートでパソコンの疲労を軽減し、集中力を高める

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パソコンは現代において、仕事や研究において欠くことができないツールだが、長時間パソコンで作業をしていると、疲労し、集中力の低下を避けることは難しい。

 

厚生労働省が平成21年に公表した「平成20年技術革新と労働に関する実態調査結果の概況」によれば、調査の対象となった事業所の全てにパソコンなどのコンピュータ機器が普及する一方で、コンピュータ機器の使用による精神的な疲労やストレスを感じている労働者の割合は、「たいへん感じている(5.2%)」「やや感じている(29.5%)」をあわせると34.6%に達するという。


しかし、このようなパソコンの作業による疲労や集中力の低下は、簡単な工夫で緩和できるかもしれない。東京医科歯科大学の研究チームが発表した論文によれば、パソコン作業の前にチョコレートを食べると、作業による疲労をやわらげ、集中力が維持される可能性があるという。

 

今回は、本研究チームによる興味深い研究成果を紹介したい。なお、論文は日本健康医学会雑誌17巻(2008)1号に掲載されたものである。

 


実験の対象となったのは、都内の4年制大学に在籍する看護学専攻の1年生45名で、有効回答者39名における、平均年齢は18.9歳、男女の構成比は男性4名、女性35名であった。


実験の対象者には、事前の調査用紙に回答後、ランダムにチョコレートを摂取する群、黒砂糖菓子を摂取する群、コントロール群に分かれてもらい、午後1時から始まる「パソコンを用いた情報処理演習」を約3時間受講してもらった。そして、演習終了時に、再び同じ内容の調査用紙を回答してもらった。なお、調査用紙の回答項目には、日本産業衛生協会産業疲労研究会の疲労自覚症状調査表検討小委員会が作成した30項目が使用された。

 

表1:実験の対象者に摂取してもらった甘味物の詳しい内容
チョコレート群(16名)
市販のミルクチョコレート16 g, 95 kcal。カカオ(カカオマス・ココアバター)22.8%、乳脂肪分(全粉乳・バターミルク)6.0%、砂糖35.0%を含む
黒砂糖菓子群(14名)
市販の黒砂糖菓子12 g, 45 kcal。黒砂糖を52%の他、小麦粉、水分などを含む
コントロール群(9名)
摂取無し

 


そして、得られた回答を統計学的に分析したところ、次のような興味深いことが解った。


まず、演習開始時におけるチョコレートの摂取によって、長時間集中力が維持される可能性があることが示された。特に、演習開始前8時間以内に甘味物を摂取しなかった者については、演習開始時のチョコレートの摂取によって、イライラしない、疲労感が少ないなど精神的な安定が見られ、長時間集中力が維持される可能性があることが示された。


演習開始前8時間以内に甘味物を摂取しなかった者は、チョコレート群11名、黒砂糖菓子群7名、コントロール群4名であった。


これまでに行われてきた先行研究によって、チョコレートの摂取によって疲労が緩和されることやチョコレートの原料であるカカオに含まれているビタミン、カフェイン、テオブロミンなどの成分には精神を鎮静化する作用があることなどが指摘されてきたが、この研究成果はこれらの先行研究を支持するものとなった。

 

現代において、仕事や研究にパソコンは欠かすことができない。しかし、やはり長時間のパソコン作業は疲労が溜まり、どうしても集中力が落ちてしまう。

 

日々のパソコン作業の疲労を和らげ、集中力の維持を助けるルーティンアイテムとして、お気に入りのチョコレートを仕事や研究のお供にしてみるのはいかがだろうか?

 

【参考URL】
論文「チョコレート摂取がコンピュータ演習後の疲労感に及ぼす影響」
厚生労働省「平成20年技術革新と労働に関する実態調査結果の概況」

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