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Vol.02
ESG経営における空気質(IAQ)の重要性と職場環境改善の取り組み

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環境問題への対応や多様性の推進などへの企業の取り組みは世界中でますます重要視されています。
その中でも昨今注目を集めているのが「ESG経営」という経営戦略です。

本コラムでは、ESG経営の概要とその取り組みの一つである職場環境の改善、特に「空気質 (IAQ: Indoor Air Quality)」との関係について解説します。

 

 

ESG経営とは?

 

ESG経営とは、環境問題への取り組みや社会的規範や管理体制の遵守を重視する経営の在り方のことで、「ESG」は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字からきています。

 

環境の分野では、さまざまな環境問題の解決に貢献すること、社会の分野では、所得格差や男女格差、人口問題などの解決に貢献すること、ガバナンスの分野では、株主や従業員の権利擁護、法連遵守、情報開示などに取り組むことが企業として求められます。

 

 

ESG経営のメリット

 

ESG経営のメリットは大きく3つあるといわれています。

 

1つめは、新規事業が創出できるというメリットです。ESG経営で環境問題や社会問題に取り組むためには、自社の事業が社会に対してどのように貢献できるかを考えます。そうした社会の要求に応じた商品・サービスの追求によって、新規事業の開発に繋がる可能性があります。

 

2つめは、非財務情報を積極的に開示することで社外からの評価を高めることができるというメリットです。ESG経営で優れた評価を得られれば、投資を呼び込みやすくなったり、信頼のおける企業として取引の拡大に繋がったりする可能性があります。

 

3つめは、優秀な人材が確保できるというメリットです。環境に配慮し、社会の要請に応える「社会的価値の高い企業」であることは、優秀な人材を確保する上でも重要になります。例えば、途上国を中心に水や衛生問題等の解決に取り組む某グローバル企業は、各国で働きたい会社ランキング1位の常連です。

 

 

ESG経営の課題と取り組みの難しさ

 

 

実際に企業としてESG経営を行うことは簡単なことではなく、もちろん多くの課題やハードルがあります。本コラムでは3つの課題をご紹介します。

 

1つめは、初期コストがかかる点です。ESG経営をはじめるにあたっては、どうしても初期コストがかかってきます。たとえば、「会社の電力使用量を削減しようと考え、すべての蛍光灯をLEDに交換する」といった場合を想像してみるとわかりやすいかもしれません。また、長期的な計画のもと、積極的な実行をおこなっていかなければ、コストがかかるだけで利益や企業価値が上がっていきません。

 

2つめは、短期的評価が難しい点です。環境に配慮したESG経営をはじめたからといって、すぐにその効果が出ることは稀です。そのため、ESG経営を行なっていく上では長期的な展望と、度重なる評価やフィードバックが必要になってきます。

 

3つめは、ガバナンスの評価が難しい点が挙げられます。これは一般的にESG経営の中でも「ガバナンス」は特に定量的かつ明確な指標を設けにくいためです。

 

 

ESG経営の一例:空気質(IAQ)による職場環境改善

 

 

ESG経営においては、環境保護などの対外的な活動だけでなく、社員が健全に働ける環境の整備や、適切な労働時間の管理など、ウェルビーイングを意識した職場改善の活動も重要です。

 

特に近年は、「健康経営」の観点から、企業にとって財産である「人財」を第一に考え、従業員の健康管理を経営的な視点で実践していくことが求められています。

 

そんな中、新型コロナウイルスの大流行を受けて、世界的に注目度が高まっているのが、職場の「空気質 (IAQ: Indoor Air Quality)」です。

 

空気質の低下は感染症の発生リスクを高める等の健康面への悪影響だけではなく、仕事の生産性をも低下させることが数々の研究で指摘されており、一日の大半を過ごす職場環境の空気質向上のために空気清浄機や加湿器の導入などの対策を積極的に行う企業がいま増えています。

 

 

空気質の見える化でより効果的な対策を実践

 

職場環境の快適さを上げるうえで空気清浄機や加湿器の導入だけでも一定の効果は期待できますが、職場ごとに異なる空気質の現状・改善点をきちんと把握し、最適な対策を探ることでより効果的な対策を実施することができます。

 

ひと口に空気質といっても、温度、湿度、人体から発生する二酸化炭素、建築建材やオフィス家具から出る揮発性有機化合物(VOC)、ほこり、花粉、PM2.5、ダニ、カビなどさまざまな要因が関係しており、季節や時間帯等によっても空気質の状態は変化します。

 

そのため空気質センサーによって空気質の現状を把握することは、適切な対策の検討段階から、対策実施後の継続的な効果測定におけるまで非常に重要です。

 

また空気質モニターのディスプレイを介して、その場にいる誰もが空気質の状態をリアルタイムで把握できるという透明性の高さは実際に働く従業員の安心と、対策を実施する企業に対する信頼感を生み出します。

 

働きやすい職場環境を提供することは、従業員のエンゲージメントを高め、離職率の抑制などに繋がります。こうした積み重ねの結果が社会的な評価の向上につながることも期待できるでしょう。

 

ESG経営の取り組みの一つとして、空気質センサーを活用した職場の空気質改善を実践してみてはいかがでしょうか。

 


 

空気のDXでより健康的な職場環境を実現

 

 

「オリエンタル技研工業」が提供する「センシングユニット カナリア」は、健康や生産性に影響を与える「温度」、「湿度」、「CO2」、「PM2.5」、「総揮発性有機化合物(tVOC)」の5つの代表的な室内空気質要素を高精度にモニタリングしまう。また、測定値が設定した閾値を超えると表示と音声で警告し、効率的に空調管理・換気などのリスク抑制のためのアクションを促すことで、安全・快適な室内環境の維持に貢献します。

 

空気環境が気になる方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

 


 

[参考文献]

[1]   伊藤邦雄 (2018)「ESGと統合報告を巡る最近の動き」『経済広報』(2018 年 1 月号)

[2] 「特集 ESGは「攻め」に効く:ESG経営 3つのメリット:「外圧」を逆手に成長する」『日経エコロジー』(226), 日経BP社, 2018, pp.31-33.

[3] 「EGS経営における課題とは? 日本・海外の現状や導入時のポイント

[4] 「ESG経営が求められる時代の経営ポイントとは?

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