研究や仕事のマストアイテムとしてコーヒーを愛飲している研究者やビジネスマンの方は多いことだろう。
ハードな仕事をする時にも、クリエイティブな創造をする時にも、そのお供としてコーヒーが広く愛されているのは、その成分であるカフェインに仕事や研究における情報処理能力を高める効果があることが知られているからだ。
コーヒーと言えば、この「カフェイン」に注目しがちだが、実はその香りを嗅ぐだけでも集中力や情報処理能力を高める効果があることをご存知だろうか?
杏林大学医学部の古賀良彦教授は、香りが与える脳への影響に関する研究の中で、コーヒーの香りを嗅ぐことにより情報処理能力の向上やリラックス効果をもたらすことを科学的に証明している。
本コラムではこのような先行研究を踏まえ、そんなコーヒーの香りがもたらす効果の一つである「集中力や情報処理能力の向上」に焦点を当て、その効果を統計的手法を用いて実際に検証した、湘南工科大学の研究チームによる研究成果を紹介したい。
なお、論文は日本健康心理学会大会発表論文集/33巻(2020)に掲載されたものである。
実験は2019年11月5日から11月29日にかけて、某大学内で行われた。実験に参加したのは、大学に在籍する1~3年生の学生20名(男性16名、女性4名)と教職員4名(男性3名、女性1名)の合計24名だ。
実験ではまず、参加者をランダムにAグループ(12名)とBグループ(12名)の2つのグループに分けた。そして、それぞれ100マス計算を1分間行ってもらい、情報処理能力を測定。その後、グループ別にコーヒーまたは比較対象のために用意した無臭の水を3分間嗅いでもらってから再び、それぞれ100マス計算を1分間行ってもらい、情報処理能力を測定した。
そうして得られたデータを統計的に処理した結果、次のような興味深いことが分かった。
コーヒー、水どちらの場合であっても、香りを嗅ぐ前では、2つのグループ間で、計算の正解数に統計的な有意差は見られなかった。しかし、それぞれの香りを嗅いだ後に行った検証では、2つのグループ間で計算の正解数に統計的にも有意な差が見られるようになった。すなわち、コーヒーの香りを嗅いだグループの方が、水の香りを嗅いだグループに比べて、統計的により多くの正解を出したことが確認されたのである。
この結果に基づいて、研究チームは「コーヒーの香りを嗅ぐことは、情報処理のスピードを上げ、脳の活動を活性化するために有効である」と結論付けている。
カフェに行くと、まるで勉強や仕事のモードのスイッチが切り替わったように、効率が一気に高まったという経験をしたことがある人は少なくないだろう。カフェがもたらすこの現象には、店内で流れるBGMや人の話声といった適度な雑音の存在や近くに同じように作業に励む他人がいることで作業が促進されるといったことだけではなく、空間いっぱいに広がるコーヒーの香りも大きく作用していると考えられる。
また、飲まずともその香りを嗅ぐだけで集中力を高めてくれるという事実は、コーヒーは苦手だが香りは好きという人にとっても良いニュースではないだろうか。
コーヒーが香りだけでも集中力向上の効果がある要因には、その香りが複雑で唯一無二であるということが関係していると言われている。コーヒーの香り成分は800種類以上もあると報告されており、ワインが200種類程度の香り成分からなるという事実と比較しても、コーヒーの香りがいかに多くの成分の複雑な組み合わせの結果、あの芳醇な香りを醸し出しているのかがお分かりいただけると思う。
仕事や研究の集中力を高めたいときには、ただコーヒーを飲むだけではなく、その香りを楽しむことを意識して、より充実したブレイクタイムを過ごしてみてはいかがだろうか。
【参考URL】
論文2「コーヒーの香りが集中度としての情報処理能力に与える効果」
論文3(総説論文)「コーヒー/カフェイン摂取と生活-カフェインの精神運動刺激作用と行動遂行-」
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